国際政治分析における第三の視座
- 信彦 首藤
- 1月5日
- 読了時間: 3分

2026年1月3日アメリカ軍特殊部隊はヴェネゼラ首都カラカスの大統領公邸を急襲し、警備兵を殺害しマドウラ大統領および夫人を拉致しアメリカに連れ去った。作戦完了後、トランプ大統領は直ちに記者会見を開き、一連の攻撃を成功と説明し、以後は同国を自分たちが運営する(run the country)と述べ、さらに大統領不在の空位を担うロドリゲス副大統領(暫定大統領)に対し、今後アメリカに協力しないと「さらに大きな代償を払うことになる」と恫喝した。
そもそも主権国家を攻撃し、その指導者を拉致するのは国際法違反どころか法を超えた人類の基本ルールや自然摂理に反する暴挙である。また国際法以前に、アメリカ憲法において大統領は議会の承認無しにこのような国際的な行為を行うことができない。
また攻撃の根拠となる麻薬密輸だが、それをマドウラ大統領が自ら指揮してアメリカ社会を攻撃している根拠が示されたことはない。アメリカへの麻薬・薬物はコロンビアやメキシコから持ち込まれるので、ヴェネゼラが中心ではない。攻撃の根拠は世界最大の石油埋蔵量で、それが真のターゲットであろう。それは国際政治ではなく、いかなる主張も無視して自分の強欲を満たすイソップ物語の世界だ。
おそらく時間の経過とともに、この世紀の愚行が世界中で批判され、トランプ政権のみならずアメリカ自体が大きなダメージをうけることになろう。
問題は国際政治をこのような愚行(absurdity)が動かすような時代に我々が生きていることだ。これまで国際政治の教科書は規範(norm)に従って分析され記述されてきた。しかし、現実の世界は必ずしも規範通り(normative)ではない。そこでリアリズムの分析が登場し、さらにより現実の国際社会の現状に近い分析であるネオリアリズム(R.ギルピンなど)やアグレッシブリアリズム(最近、ウクライナ戦争で評価が高まったミヤシャイマー)などに基づいた現実的な国際政治の分析が行われている。小生もその立場だ。
しかし、今回の歴史的愚行は、現実に発生している危機や紛争に第三の視座すなわち不条理、馬鹿げた行為(absurdity)に基づく分析が必要なことを明らかにした。イスラエルのガザ住民抹殺の攻撃も同じような愚行(absurdity)だ。一時的にガザを占領し、住民を駆逐しても、その後遺症は巨大な反イスラエルのテロとしてイスラエルそして世界を襲ってくる。要するに長期的には利益どころか大惨事を招く可能性のある選択肢を強行しても、その結果は真逆の効果を生む。
今、世界はまさに愚行とその萌芽に満ちている。それを見て、自らも愚行に走る指導者も登場し蔓延し始めている。我々はこのあまりにも危険な第三の視座をよく分析し、その萌芽を確実に摘まなければならない。日本もこの愚行を魅力的な選択肢として賛同したり、さらに自らがこうした愚行に走らないという保証もない。一刻も早く、高市政権のみならず、機能不全に陥った日本政治を根底から変革しなければならない。




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